ダイビルグループにとって、サステナビリティへの取り組みは最も大切なミッションの一つです。こうした考えは、「グループ行動規準」に具現化されています。経営理念を志向し、「グループ行動規準」を遵守して企業活動を行うことに、我々は最大限の努力を尽くし、社会とともに持続的発展を目指していきます。
また、「グループ環境方針」 に則り、広く顧客・地域社会・事業パートナーなどのステークホルダーと協力し、みどり豊かなまちづくりと自然環境との共生を進めていきます。
当社は 1923 年の創立以来、⾧年にわたり屋上緑化など自然との共生を意識したビル造りや保有ビルの環境負荷低減、また、地域社会との共生に注力してまいりました。今後も引き続きサステナビリティに向けた取り組みを推し進め、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に寄与してまいります。
社会が抱えるさまざまな課題を事業視点で評価し、社会とともに成⾧するために、短・中・⾧期の時間軸それぞれにおいてビジネスチャンス(機会)やリスクとなり得る重要課題をマテリアリティとして策定しました。
(1) 社会への価値提供(または社会資本の毀損低減)に関する重要課題 <マテリアリティ>
①時代の変化に対応した最適なオフィスの提供
②地域に根付き、街とともに発展する
③環境にやさしいビルを次世代へ
(2) 価値提供の基盤強化に関する重要課題 <推進基盤>
①人材・組織力の強化
②高品質なサービスの基盤となる知的資本の蓄積
③ステークホルダーとの協創による価値創造
④持続的な企業価値向上を支えるコーポレートガバナンスの進化
【注】「(1)社会への価値提供」とそれらを推進する「(2)価値提供の基盤強化」の 2 部構成としまし た。「(1)社会への価値提供」に掲げた狭義の 3 つのマテリアリティは当社経営理念「ビルを造り、街を創り、時代を拓く」と対応するものであり、(1)①は“オフィスビル”を、同②は“地域との関わり”を、同③は“環境配慮”をテーマとしています。
当社では2021年度に特定したマテリアリティを踏まえ、課題実現・解決への取り組みを実効性ある形で推進していくため、2022年度に各マテリアリティに関連するKPIを設定しました。今回設定したKPIは、その実現可能性や社内浸透等を考慮して原則当社単体かつ国内保有ビルを対象範囲としましたが、今後も議論を重ね、対象範囲をグループ全体、国内外保有ビルへと拡大することを検討するほか、定量目標の具体化や目標達成へのアクションプラン策定を進め、グループ全体として持続的な成長を目指してまいります。
(1)時代の変化に対応した最適なオフィスの提供
(2)地域に根付き、街とともに発展する
(3)環境にやさしいビルを次世代へ
(1)人材・組織力の強化
(2)高品質なサービスの基盤となる知的資本の蓄積
(3)ステークホルダーとの協創による価値創造
(4)持続的な企業価値向上を支えるコーポレートガバナンスの進化
当社は共同事業者とともにダイビル本館西側に整備した「中之島四季の丘」につながる歩行者用ブリッジを設置しました。本ブリッジは、敷地北面を流れる堂島川の遊歩道および敷地西側の中之島4丁目地区に開館した大阪中之島美術館に接続しています。これにより、中之島地域の回遊性が増すとともに、歩行者の安全性の向上にも寄与しています。
安心して働けるオフィスビルを提供するため、毎年、所有するビルにおいて防災訓練を実施しています。訓練では、テナントの皆様の防災知識を高めてもらうことを目的として、避難ルートの確認のほか、所轄消防署にもご協力頂き、ビル屋上などで煙体験や消火器取扱訓練を行っています。
2013年から大阪・中之島地域にて、夏の涼感を得る昔からの日本人の知恵であり、ヒートアイランド現象の抑制となる打ち水を「中之島ウエスト打ち水プロジェクト」として同地域の企業と共に実施しております。
2012年から大阪・中之島地域の企業と共に、堂島川に掛かる大江橋から玉江橋及びその遊歩道、周辺エリアの清掃活動を実施しております。
大地震発生に伴い発生する帰宅困難者に対する支援体制の充実を目的として、2010年から毎年、秋葉原駅エリア周辺地域の企業・団体と共に、帰宅困難者対応訓練を実施しております。
テナントの皆様や来館者が容易にご利用頂けるよう、主要ビルにAEDを配備しています。また、グループ社員は、AEDの取扱い方法及び緊急救命についての講習を受講しています。
2006年から始まったクラシック音楽の祭典「大阪クラシック」は、オフィスビルの一角やカフェなどを主な会場とし、クラシック音楽に馴染みの無い方でも楽しめるコンサートです。当社は、地域の文化活動に貢献するため、2009年9月より、「大阪フィルハーモニー交響楽団」をはじめとした様々な楽団に対し、「中之島ダイビル」「ダイビル本館」「新ダイビル」の吹き抜け空間を舞台として提供しています。
2015年3月、新ダイビルの建設にあわせてビル南側の堂島公園を整備し、大阪市に寄付しました。堂島公園の土地は、1959年に当社が緑地公園を整備して大阪市に寄付したものです。公園は高速道路建設のため撤去された後、1977年に再整備されましたが、老朽化が進んでいたため、大阪市や地元との協議の上改めて整備を行いました。今回の整備では、明るく清潔感のある公園とするため、不法駐輪対策や照明の増設、舗装・植栽の改修などを行っています。
「OPEN HOUSE LONDON」に代表される一般市民に建築を無料で開放し、建築物を身近に感じてもらうためのイベントの大阪版である「生きた建築ミュージアム フェスティバル大阪」に協力しています。当社はこれまでにダイビル本館のガイドツアー、こども向けワークショップなどのプログラムを実施しています。
2017年10月に開催された「第23回大阪YMCAインターナショナルチャリティーラン2017」にスポンサー企業として協賛するとともに、当社従業員や家族がランナーとして参加しました。本イベントは障がいのある子どもたちを応援することを目的に開催されており、チャリティーランの参加費や協賛金はYMCAが実施する障がい児の支援プログラムに充てられています。当社は本イベントに継続して協賛していく方針です。
当社が2012年に事業進出したベトナムでも、地域・社会が抱える課題解決に貢献することで共に発展していきたいとの想いから、随時社会貢献活動を行ってきました。2021年には新型コロナウイルスワクチンの輸入・購入、研究開発や感染対策実施を目的に設立された「新型コロナウイルスワクチン基金」に6億ベトナムドン(約290万円相当)の寄付をベトナム事業会社(現地法人)と共同で実施しました。その他には、施設で暮らす孤児やホームレス等を支援するチャリティイベントなどの活動も実施しています。
「新型コロナウイルスワクチン基金」への寄付窓口であるハノイ・ホアンキエム区祖国戦線との寄付金贈呈式
ダイビルグループは「国連グローバル・コンパクト」へ参加しました。国連グローバル・コンパクトは、1999年1月当時の元国連事務総長アナン氏が提唱、2000年NY国連本部で発足したもので、企業活動を通じ、人権、労働、環境、腐敗防止の4分野に関する世界的に認められた10原則を自主的に支持し、実践することを求めた取り組みです。「グループ行動規準」と10原則は、共通の理念を持ち合わせており、国連グローバル・コンパクトに参加することでサステナビリティへの取り組みをより一層積極的に推進します。
「新ダイビル 堂島の杜」は、旧新ダイビル屋上樹苑の精神を受け継ぎ「人だけでなく生物にとってもやさしい森」をコンセプトとして、旧ビルの屋上樹苑で育った樹齢約50年のケヤキやモミジ等の樹木の一部を移植したほか、在来種を中心とした樹木を用いて旧ビルと同じ約1,000坪の緑地を整備しました。これらの取り組みにより、生態系への貢献を評価する「JHEP認証」でも西日本初となる最高ランク「AAA」評価を取得しています。
JHEP 認証最高ランク「AAA」取得/ DBJ Green Building 認証最高ランク「2014 five stars」取得/CASBEE大阪みらい(大阪市建築物総合環境評価制度)最高ランク「S」取得/第15回「屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール」“屋上緑化部門 日本経済新聞社賞”を受賞/第36回「緑の都市賞」“緑の事業活動部門 都市緑化機構会長賞”を受賞/第6回「みどりのまちづくり賞(大阪ランドスケープ賞)」“ランドスケープデザイン部門 大阪府知事賞”を受賞/第10回「おおさか優良緑化賞」“大阪府知事賞”ならびに“生物多様性賞”を受賞/「SEGES(シージェス、社会・環境貢献緑地評価システム):都市のオアシス」に認定
なお、生態系への貢献度を具体的に把握するため、「新ダイビル 堂島の杜」完成後の2016年度と2020年度に外部機関による生物モニタリング調査を行った結果、堂島の杜の中で一定の食物連鎖が成立していることが確認されています。鳥類・昆虫類にとって、こうした生息環境は都市部では貴重で、生態系への貢献度は高いと評価されました。
- 調査実施期間
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第1回 2016年4月~2017年3月
第2回 2020年4月~2021年3月 - 現地調査による確認種
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鳥 類:
第1回 15種
第2回 18種 シジュウカラ、ヤマガラ、ヒヨドリ、ウグイス、キジバト、メジロなど -
昆虫類:
第1回 54種
第2回 68種 ハラビロカマキリ、オオシオカラトンボ、アオスジアゲハなど - 生態系ピラミッドのイメージ
- ※堂島の杜の生態系ピラミッドのイメージ(写真は全て現地にて撮影)
【GHG排出量削減】
当社グループでは、長期目標として2050年までにGHG排出量をサプライチェーン全体でネットゼロ、中期目標として2030年までにScope1およびScope2については75%以上削減(2019年度比)、Scope3については30%以上削減(2019年度比)とすることを掲げています。2022年4月をもって国内で保有する全てのビル*1の全使用電力を対象にCO2フリー電力*2導入を完了したほか、ベトナムにおいてもCO2フリー化したため、CO2排出量は減少傾向にあります。
【エネルギー使用量の削減】
当社所有ビル*3における過去5年度のエネルギー使用量と原単位使用量(稼働床面積当たり)は右図の通りです。年度ごとに稼働床面積は異なり、エネルギー使用量は増減しますが、環境負荷低減の取り組みにより、原単位ベースでは減少傾向にあります。2023年度は既存ビルの閉館、新規物件の取得による変動があり、エネルギー使用量は減少しましたが、原単位としては前年度比増加しております。
なお、23年度のエネルギー使用量は過年度との統一のため、改正前省エネ法の換算係数を使用しております。
【照明設備のLED化】
長寿命かつ電力消費効率が高く、環境にやさしいLED照明への切り替えを積極的に推進しています。概ね2026年までに切り替えを完了する計画で2022年度末時点の進捗率は約70%となっています。また、昼間日光により室内の明るさが確保できるときはセンサーが感知して照度を下げ、人が不在と感知したときは消灯することで電力の無駄な消費を削減しています。
【CO2フリー電力の採用】
2022年4月より国内の全保有ビルに対しCO2フリー電力を導入しています。当社が採用したCO2フリー電力はRE100対応の非化石証書付電力(トラッキング付)*4であり、導入対象ビルのテナントは、そのオフィスや店舗等で使用する電力のCO2排出量がゼロになるため、環境面で企業評価の向上につながります。導入対象ビル20棟合計で年間約67百万kWh*²の電力が再生可能エネルギー由来に置き換わり、CO2排出削減量は年間約2.6万トン*5、一般家庭換算で約1.4万世帯分に当たります。また、ベトナムに保有するビルにおいてもCO2フリー化を実現し、これにより年間約6,500トン*6のCO2排出量削減が見込まれています。
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GHG排出量
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エネルギー使用量
- 原油換算エネルギー消費量(kl)
- 原単位消費量(kl/m²)
当社所有ビル*3における過去5年度の水使用量と原単位使用量(稼働床面積当たり)は右図の通りです。2023年度は2020年度以降の感染症対策の影響が緩和され、各入居テナントの稼働率が上がったこともあり、水使用量、原単位は前年度より増加したものの、2019年度比で約20%削減、原単位ベースでも約13%削減となっています。当社ではビルの新築・改修時に最新の衛生器具を採用するほか、雨水を植栽灌水に活用するなど、水資源の有効利用に努めています。
水使用量
- 水使用量(m²)
- 原単位使用量(m³/m²)
当社所有ビル*7における過去5年度の廃棄物排出量と原単位排出量(稼働床面積当たり)は右図の通りです。廃棄物排出量は物件取得などにより年度ごとに増減しますが、原単位ベースでは減少傾向にあります。
【ビルのライフサイクルを通した廃棄物の削減・適正処理】
ビルの建設・解体段階では様々な廃棄物が発生します。当社は環境汚染につながる物質や有害な物質を法令に則り適正に管理・処分するほか、コンクリートガラや空調設備に利用されているフロン・臭化リチウムなどの回収・再利用も行っています。現在進行中の御堂筋ダイビル建替計画においては、既存ビルの躯体を掘削時の土砂留めとして利用しました。ビルの運用段階においても、廃棄物の削減に努め、リサイクル推進のためゴミの分別収集体制を構築しています。
廃棄物排出量
- 廃棄物排出量(t)
- 原単位排出量(t/m²)
*1 建て替えを予定しているビルおよび当社が電気需給契約を締結していないビルを除く
*2 非化石証書の使用により、実質的に再生可能エネルギー由来の電力
*3 集約対象:当社オフィスビル・商業ビル29棟(省エネ法届出対象ビル)
*4 発電所のトラッキング情報を追加した非化石証書を活用した電力
*5 対象ビルで2019年度に使用した電気使用量の総量を基に試算
*6 対象ビルで2021年度または2022年11月までに使用した電力使用量の総量を基に試算
*7 集約対象:省エネ法届出対象ビルのうち集計可能な当社所有オフィスビル
当社では「グループ環境方針」に則り、グループマテリアリティ(サステナビリティに係る重要課題)のひとつとして「環境にやさしいビルを次世代へ」を掲げ、環境負荷の少ないみどり豊かな街づくりを推進しており、広く顧客・地域社会・事業パートナーなどのステークホルダーと協力し、社会とともに持続的発展を目指してまいります。また、幅広くステークホルダーの皆さまに改めて当社のサステナビリティに関する取り組みを周知することも見据え、資金調達面からも推進するべくグリーンファイナンス・フレームワークを策定し、グリーンファイナンスに積極的に取り組んでいきます。
当社は、国際資本市場協会(ICMA)が公表するグリーンボンド原則、環境省が策定するグリーンボンドガイドライン及びグリーンローンガイドライン、並びにローンマーケットアソシエーション(LMA)、アジア太平洋地域ローンマーケットアソシエーション(APLMA)及びローン・シンジケーション&トレーディング・アソシエーション(LSTA)が定めるグリーンローン原則に則したグリーンファイナンス・フレームワークを策定しております。また、原則等との適合性に対するオピニオンを株式会社日本格付研究所(JCR)より取得しております。
「御堂筋ダイビル」は大阪のメインストリートである御堂筋に面し、難波神社の緑を望む好立地に位置する新時代のオフィスビルであります。「Your Premium, Your Workplace」をコンセプトとし、働き方の多様化に対応可能なワークプレイスや心身の健康をサポートするビル内環境を提供します。当社が継承する「自然との共生」の精神を大切にし、環境負荷の抑制や災害時のBCP対応も講じており「CASBEE-スマートウェルネスオフィス」*1認証最高位の「Sランク」を取得しました。また、オフィス部分については建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)において最高ランクである5つ星の評価及び「ZEB Oriented」*2の認証を取得しております。
*1 「CASBEE-スマートウェルネスオフィス」は、「CASBEE-ウェルネスオフィス」認証と、建物の環境性能評価(御堂筋ダイビルにおいてはCASBEE大阪みらい)を併せて認定される制度です。「CASBEE-ウェルネスオフィス」は建物利用者の健康性、快適性の維持・増進を支援する建物の仕様、性能、取組みを評価するツールです。建物内で執務するワーカーの健康性、快適性に直接的に影響を与える要素だけでなく、知的生産性の向上に資する要因や、安全・安心に関する性能についても評価します。
*2 「ZEB Oriented」とは、外皮の高性能化及び高効率な省エネルギー設備に加え、更なる省エネルギーの実現に向けた措置を講じた、延べ面積が1万平方メートル以上の建築物を対象とした認証制度です。エネルギー消費量に関する判断基準としては、該当する用途毎に、再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から規定する一次エネルギー消費量を削減することと定義されています。(事務所等、学校等、工場等は40%以上の削減、ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等は30%以上の削減) 御堂筋ダイビルのZEB Oriented認証範囲は、「事務所等」の範囲です。
本計画は、東京駅至近かつ八重洲地下街から地下直結のプレミアム立地に、東京地区における当社のフラッグシップオフィスビルを建設するもので、2023年3月に旧「八重洲ダイビル」の解体を終え、新築工事を進めております。
新ビルは、周辺再開発が進むこれからの八重洲でも変わらぬ存在感を示すため、旧ビルの価値を継承し、品格のあるデザインと街と人に開かれた緑で、新たな八重洲の景観を創出します。気候変動対策として環境負荷の抑制や災害時のBCP対策も講じており、「CASBEE-ウェルネスオフィス」*3においてSランク、米国の建物環境認証システムLEED認証においてGOLDを取得する予定です。また、オフィス部分については、BELSにおいて5つ星の評価及び「ZEB Oriented」の認証を取得する見込みです。
完成予定パース
*3 建物利用者の健康性、快適性の維持・増進を支援する建物の仕様、性能、取組みを評価するビル認証制度。
〇資金充当状況レポーティング(2024年9月30日時点)
2023年度発行分
グリーンボンド(ダイビル株式会社第21回無担保社債)
※調達金額のうち、リファイナンスの概算額(割合):38億円(31.7%)
上記未充当金額は2024年度内に八重洲ダイビルの新築工事資金に充当予定です。
〇インパクトレポーティング
※御堂筋ダイビルは2024年1月31日竣工しておりますが2023年度は未稼働であるため、八重洲ダイビルは竣工前であるため、実績を開示しておりません。