06 1989 東京 日比谷ダイビル 稼働中のビルを建て替える
高難度のプロジェクトに挑む

浮上した建て替え計画

1982(昭和57)年、東京・日比谷ダイビルの建て替え計画が浮上した。1号館・2号館とも築後60有余年が過ぎ、老朽化が進んだことに加え、当時東京では貸室需要が旺盛だったこと、ビル建築の基準が大きく変わって延床面積を増やすことができ、希少価値の高い東京都心に1100坪程度の貸室スペースを新たに生み出すことができるといった点から計画されたものだった。

  • 建て替え前の1号館と2号館

しかし、難題が1つあった。これだけの規模のビルの建て替えはダイビルといえども経験がなかったことである。これまでは取得した土地に新たに建築するケースがほとんどで、多数のテナントが入居している稼働中のビルを解体し、建て替えるというプロジェクトは初めてであった。しかも、今回は1号館・2号館とも老朽化が進んでいるため、両方のビルを建て替えなければならないのである。

建て替え計画の推進にあたってダイビルに突きつけられた課題は次の2点であった。まず、テナントの仮移転先をどうするかである。建て替えにあたってはテナント企業の業務にできるだけ影響を与えないことが大前提であるが、やはり解体~建設期間中は仮の場所に移転し、そこで業務を続けてもらうしかない。しかし、その移転先が問題なのである。当時、東京都心のオフィス賃貸市場は超貸手市場であったから、仮移転先の確保が難航することは十分に予想された。

もう1点は、建て替えにあたって1号館・2号館を一括して建て替えるか、別々に段階的に取りかかるかという建て替え方式の問題であった。大規模なプロジェクトだけに計画がスムーズに進まなければダイビルの業績にも大きな影響を与える怖れがあった。