11 2007 海外 海外事業 初めての海外事業展開への挑戦

思いもかけなかった好物件との遭遇

ベトナムで大きな動きがあったのは2011(平成23)年9月のことだった。ダイビルでは2007年から中期経営計画「“Daibiru-3D”プロジェクトPhase-Ⅰ」に盛り込まれた成長戦略の一環としてベトナムでの開発情報の収集・調査を続けていたが、なかなか条件に適う物件が現れなかった。そうした中、付き合いのあった仲介会社からサイゴン・タワーに関する情報が寄せられたのである。サイゴン・タワーは現地で相談相手になってくれていた弁護士事務所が入居していたビルであり、「え、このビルが?」と言うくらいダイビルの駐在員にとってなじみのあるビルだった。それが売りに出されるのだという。

  • サイゴン・タワー

ダイビルにとってこれほどの優良物件はほかにないと思われた。サイゴン・タワーはホーチミン市中心の「統一会堂」を起点とする、市内有数の目抜き通りに面した外交・ビジネス街の中心地に位置し、ホーチミン市のAグレードビルの中でも外資系企業から高い評価を得て、多くの大手グローバル企業がテナントとして入居していたからである。

そもそもダイビルが海外事業の第一歩としてベトナムを選んだのは、高い経済成長を続けていた同国が東南アジアで3番目に多いおよそ8900万人の人口を持ち、うち約60%が30歳以下の若者という主に同国の将来性による。これに加えて、親会社の商船三井が同国で事業を展開していたことや、親日国で治安が良く勤勉であるといった国民性も考慮された。これまでビル取得経験がなかった社会主義国での事業展開が容易でないことは十分予想されたが、リスクのない挑戦はないとして同国への進出が決断された。

ダイビルでは2007年から情報収集・調査を開始し、2011年3月には駐在員事務所を構えて調査を本格化させており、こうした地道な取り組みがあったからこそ飛び込んできた情報であった。