09 2013 大阪 中之島3丁目共同開発 中之島ダイビル・ダイビル本館建設における
伝統の継承と最新性への挑戦

歴史を見つめてきた本物の材料の継承

90年近い歴史を物語る姿をできるだけ復元するため、ダイビル本館で使われていた本物の材料の継承を設計のテーマとした。ここで言う本物の材料とはダイビル本館の外装を構成するテラコッタ、レンガ、石材レリーフを指す。これを再利用することにしたのだが、問題はそうした部材の性能や耐久性が果たして十分かどうかである。そのまま使って将来的に損傷する恐れはないのか。そもそも解体時に取り外すことはできるのか。そこで施工業者を巻きこんだ検証を開始し、「安全性や機能性を満たされなければ諦めざるを得ないが、満たすのであれば可能な限り、本物を使いたい」との思いからダイビルでは劣化度調査や強度テストを行った。

  • レンガの圧縮強度テスト

レンガではそもそも取り外しが可能か、取り出したレンガの圧縮強度や吸水率、耐凍害性は十分かといった検証を加えた。単純なスクラップ&ビルドであればもっと簡単だっただろうが、はるかに多くの時間と手間、コストのかかる作業を繰り返さなければならなかった。すべてのレンガを取り外し、バラバラにしたあと目地のモルタルを除去し、中圧洗浄してきれいなレンガに戻す。その数約18万個。取り外すだけでも約2カ月を要した。

再使用にあたってはレンガ自体の品質を確認するため、試験場で試験を行ったが、ほとんどが現代のJIS規格基準からみても全く問題のない高品質なものだったことが判明した。後はこれをどう積むかだが、性能実験の結果、中空積み技術で90年前のレンガを積み上げることに成功した。石材レリーフもいくつかの検証を経て再利用を図った。