11 2007 海外 海外事業 初めての海外事業展開への挑戦

ビルリニューアルによるダイビル・クオリティの実践

ベトナムでは大型リニューアル工事も経験した。1996(平成8)年完工のサイゴン・タワーは設備面での更新時期を迎えつつあり、日本基準を目指して、チラー(冷却水循環装置)更新、リフトやロビー・廊下のリノベーションなどを順次実施していった。2014年にはトイレリニューアル工事を行い、ベトナムのオフィスビルでは初めて全館ウォシュレットを設置し、テナントや来客に大きな驚きを与えて好評を得た。また外観美化工事として、外壁塗装、LED照明の設置などを実施した。2016年にはエントランスホールリニューアル工事を実施したほか、2017年に変圧器更新、火災探知機設置、AED設置、2020(令和2)年にはアンチウイルスフィルター、EV乗降管理システムの導入など、継続的にビル価値の維持・向上に努めている。

  • コーナーストーン・ビルディングのエントランス

新築のコーナーストーン・ビルディングにおいてもファサード美化工事を実施した。同ビルの場合、完工から3年しか経過していなかったが、ビルの安全強化と美観向上のため2016年10月からエントランス部分の改修や正面ファサードの天然石への貼り替えなどを行った。苦労したのは日本水準の資材の入手が困難な上に、加工技術に未熟な部分が多かったことで、日本人技術者の力を借りながら加工技術の指導や品質管理を徹底しなければならなかった。

定期的な打ち合わせも混沌としていた。最初は英語で進められるのだが、議論が白熱してくるとベトナム語、日本語が入り乱れて飛び交い、激論の後に再び英語ですり合わせをするということも珍しくなかった。それだけ余分な時間がかかることになり、スケジュールの遅滞を招くということもあった。一方でそうしたやり取りを通してコミュニケーションが円滑になり、国境を超えた仲間意識が芽生えてくることも確かだった。

両ビルでは率先してESGへの取り組みも進めている。2022年にコーナーストーン・ビルディングの屋上にソーラーパネルを設置したほか、両ビルともに再生エネルギー証書取得によってビル内消費電力に伴うCO2排出量の実質ゼロ化を実現した。いずれもベトナムの大型オフィスビルとして初の取り組みとなった。

両ビルとも現状に甘んじることなく、差別化・ビル価値向上の施策により、日本で長年にわたって培ってきた「ダイビル・クオリティ」の現地での実践を進めている。