09 2013 大阪 中之島3丁目共同開発 中之島ダイビル・ダイビル本館建設における
伝統の継承と最新性への挑戦

伝統を継承しつつ最先端を追求した中之島ダイビル

大阪の中心地に位置する中之島・堂島エリアは江戸時代からいわばビジネス街として栄えてきた歴史あるエリアだが、ビルの老朽化などの理由から開発計画が動き出した。それが、「中之島3丁目共同開発」であり、ダイビルと関西電力、関電産業(現関電不動産開発)を事業者として1997(平成9)年に共同開発基本協定が締結された。

  • 伝統を継承した低層階と最新技術を導入した高層階

中之島3丁目共同開発事業において、2004年に完工した第1期の関電ビルディングに続いて第2期工事となったのが中之島ダイビルである。当時、オフィスビルの設計は、先進性や機能性が優先される一方で、居住者に優しい温かみのある「最高の空間」を提供するという本来重視すべき思想が埋没する傾向にあった。中之島ダイビルの建設においてダイビルは1925(大正14)年完工のダイビル本館から継承されてきた「最高の空間」を提供するという思想に立ち返ることにした。

具体的には、本館正面の石の装飾柱やアーチ、軒蛇腹などのデザインモチーフを低層基壇の南北両玄関にビルトインすることで、強く歴史性を打ち出した。3層吹き抜けの玄関ロビーは、黄竜山石の壁と変化に富んだテラス付き回廊、格子天井によって一種の懐かしさや優しさを感じさせる空間とした。

その上で、中之島ダイビルでは高品位なオフィス機能やアメニティを実現する最先端の機能や安全性を追求していくことにも挑戦した。それを端的に表したのが、高層オフィス部における無柱空間の実現である。構造フレームである石打ち込みSRC-PC柱によって全周を構成し、内部のオフィスゾーンを無柱にすることに成功したのである。その際、地震による石の落下を防ぐため、柱の変形に石を追従させるためのシミュレーションを何度も行い、また実際にPC柱を使い、想定地震外力を与えた実験を繰り返した。

2009年3月に完工した中之島ダイビルは、低層階は伝統を継承した懐かしさや優しさを感じさせるデザイン空間となり、高層階では最新の技術が可能にした使い勝手のいい無柱オフィスゾーンが実現した建築物となった。