03 1963 大阪 新ダイビル 大駐車場や屋上樹苑といった
時代を先取りした先駆的オフィスビル

モータリゼーションの到来を予見

1961(昭和36)年4月、当初計画していた通り、新ダイビル北館の建設に着手した。政府による不要不急のビル建設抑制方針や第2室戸台風による被害などがあって工事は遅延を余儀なくされたものの、1963年には完工し、これによって南・北館一体となったオフィスビルゾーンが形成されることになった。不動産業が不要不急業種に指定されたことで金融機関以外に資金を求めるしかなくなった結果、建築費をテナントから借り入れる「建築協力金制度」を利用した点でも画期的と言えた。

  • 地下駐車場への入り口

完成した北館において特筆すべきは大駐車場を設置したことだろう。急速な高度経済成長を背景としてわが国にもモータリゼーションが到来しつつあった。1965年に名神高速道路が全面開通し、わが国の自動車生産台数も急激に伸びていたが、本格化するのは1960年代後半である。それを予見して大駐車場の設置に踏み切ったのは、既存ビルで駐車面積の少なさを指摘されていたとはいえ、英断といわなければならなかった。この決断により地下階に延べ1万1495m2(3477坪)もの面積が確保され、約3000台を収容することが可能になったのである。ダイビルは駐車場の大小がビルの価値評価を大きく左右する要因の一つとなることを予見していた。