11 2007 海外 海外事業 初めての海外事業展開への挑戦

いくつもの想定外の苦労を超えて

当プロジェクトはJHGによる既存ビルの解体工事を経て、2019(令和元)年から新築工事を開始した。工事は概ね順調に進んだものの、いくつもの想定外の事態に直面した。地下工事においてシドニー特有の硬い砂岩の切り崩しに時間を要したほか、2020年初めに豪州東部で森林火災が発生した際はその煙がシドニーにも広がり、市内上空は白い煙に覆われた。煙により熱気が充満したことから、工事作業員の安全確保のため、各建設現場では作業時間の短縮が求められ、当ビルの工期も約1カ月延びた。

だが本当の苦難は豪州で新型コロナウイルス感染が拡大した時に訪れた。2020年3月に国内感染の急拡大により同国政府は海外からの入国者の受け入れを停止し、感染予防の観点から市内での活動は制限され、オフィスワーカーは在宅勤務を行う日々が続いた。幸いにもこの期間中、感染予防対策を徹底することで建設工事は作業が認められ、275 George Streetは2020年7月の上棟式を経て、当初の予定からおよそ半年遅れの同年12月に完工を迎えた。完工後もコロナ禍が続いたため、テナントリーシングも苦戦を強いられた。2021年2月にメインテナントとなるScape(豪州学生寮ファンド運営会社)との契約を結び、契約率は約2割となったものの、コロナ禍により経済活動は低迷、在宅勤務増加によりオフィス需要も不透明さを増し、リーシングを担当するJHGも打つ手をなくしていた。こうした中、2019年末よりシドニーに赴任していた駐在員を通じ、複数の日系企業がオフィス移転を検討している話を聞きつけたことから、ダイビル主導でテナント誘致を進め、日系企業4社(野村総研豪州・シドニー日本商工会議所・商船三井豪州・KDDI豪州)が入居することとなった。特にシドニー日本商工会議所はシドニーに進出する大手日系企業が多数参加する組織で、同所役員会が当ビル会議室で毎月開催されることもあり、当ビルの日系コミュニティへのアピールに大いに役立った。また、ダイビル主導で一部の空室にモデルフロアを設けるなど、テナント誘致も行った。

2021年6月から再びコロナ感染が拡大し、シドニーは都市封鎖に見舞われるものの、ワクチン接種率の上昇に伴い、徐々に規制が緩和されて市中活動が再開した。2022年前半にはリーシング環境も大幅に改善してテナント確保も進み、2023年12月末時点で契約率は88%に達しており、今後早期での満室稼働の実現が期待されている。

275 George Streetへの投資・運営を通じて豪州におけるダイビルのプレゼンスは大きく向上し、現地大手企業とのパイプも深まった。同国での次なる投資実現に向け、ダイビルはさらなる挑戦を続ける。