09 2013 大阪 中之島3丁目共同開発 中之島ダイビル・ダイビル本館建設における
伝統の継承と最新性への挑戦

動き出したダイビル本館建設計画

中之島ダイビルに続く第3期工事がダイビル本館の建て替えプロジェクトである。

  • 簡素ながらも要所要所に施された装飾

ダイビル本館といえば、わが国における本格的な貸しビルの草分けとされる存在である。設計・監理は渡辺節、製図主任は村野藤吾、構造設計は内藤多仲という日本の近代建築史に名を残す建築家たちによって設計され、渡辺が後に「大阪では最初の耐震構造を有する建築物である」と語ったように優れた耐震性を備えていた。なかでも人々の注目を集めたのはオリエント風を加味したネオロマネスク様式の外観イメージであった。内外の装飾は簡素ながらも要所要所に数多くの彫塑を施し、中央玄関の半円アーチの上には「鷲と少女の像」が飾られ、ほかにもギリシャ風彫刻が多く造型されていた。

そうした名建築をどう建て替えていくのか。さまざまな議論を重ねるうちにプロジェクトを担ったダイビルのメンバーたちは一つの思いに到達する。それが「ダイビル本館は中之島のシンボルであり、時代を切り拓くビルを創り続けてきたダイビルの志の証でもある。歴史を物語る姿を復元してその姿を残しつつ、最新の機能性や安全性を実現し、末永く使い続けていけるものにしなければならない」であった。

2008(平成20)年10月、伝統の継承と最新性の追求という、一見相反する2つのテーマ実現への挑戦が始まった。